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霜田くんの鈴



昨日の深夜2時過ぎに


事務所で作業をしていたところ、窓の外から鈴の音が聞こえてきました。


(なんだろうこんな時間に……)


少し気になりましたが無視して作業を続けました。


でもその鈴の音が一向に鳴りやまないのです。


不思議に思った僕は窓を開けて外をのぞいてみたのですが


どこで鈴が鳴っているか分かりませんでした。


夜の暗がりの中から聞こえてくるような感じなのです。



「なんだか気持ち悪いなぁ」



と思いながら机に戻ったのですが、


そのとき僕はふとこの鈴の音に聞き覚えがあることを思い出したのです。


それは、今事務所に来て本を書いている霜田(しもだ)くんの鈴でした。


霜田くんはいつも鍵の束に鈴をつけており、


事務所に近づいてくるとチリンチリンと鈴が鳴るので「あ、霜田くんが来たな」と分かるのですが


部屋の外から響いてくる鈴の音は、そのときの霜田くんが鳴らしている鈴の音に聞こえたのです。


ただ、このときの僕は本当に間抜けで


「霜田くんの鈴に似ているな」


くらいしか思わずに、やはりそのまま作業を続けたのでした。


それからかなり長い間鈴の音がなっていたのですが、


あるとき音が途切れました。


「あ、鳴りやんだ」


そう思ったのですが、なぜかそのときパソコンの画面下の時計が目に入りました。



時間は



3:48



と表示されていました。




そのときでした。


全身にぞわぞわと寒気を感じたのです。



(もしかして――)



僕は思い浮かぶ答えを頭の中で必死に消し去ろうとしました。


しかしその考えは次第に僕の中で確信へと変わっていったのです。



(これはいわゆる、「虫の知らせ」というやつなのではないか――)



僕は今まで心霊現象に遭遇したことはなく、霊感のようなものもありませんでした。


しかし、このときは本当に腕にびっしりと鳥肌が立ち、身体が震えていました。


(もしかしたら霜田くんが何らかの事故に巻き込まれ、僕に最後の別れのあいさつに来ていたのではないか……)


僕は急いで携帯電話を取り出し、霜田くんに電話をしました。


しかし、霜田くんは電話に出ませんでした。


いよいよ僕は怖くなってきました。


そして同時に、強い罪悪感を覚えたのです。



というのも、僕は過去に、霜田くんの鈴に対して一度小言を言ったことがあったからです。



ウチの事務所は入り口を入ってすぐの場所に僕の部屋があるので


やってくる人たちは僕の部屋の前を通っていくのですが


僕は物音に神経質なので、霜田くんがチリンチリンと鈴の音を鳴らしながら歩いていくということに

イラッとすることがありました。


しかしなかなかそのことを言い出せず、

ただ放置しておくのも我慢できなかったので

鈴を鳴らしている霜田くんに



「その鈴はあれかい? 誰かの形見みたいなものなのかな?」



とたずねたことがあり、
つまりは、(いつも肌身離さず持ってなきゃいけないような大事なものなのか?)という皮肉を込めて言ったことがあったのです。


僕は


(どうしたあんなことを言ってしまったのだろう)


と後悔しました。



鈴くらい好きに鳴らしてあげればよかった。


何度でもチリンチリンさせてあげればよかった。


いや、鈴だけじゃない。



僕は、霜田くんに「君は料理が下手だね」と言ったことがありました。



「こんなまずい味噌汁飲んだことないよ」



と言ったことがありました。



でも、人には得手不得手があるのだから



まずい味噌汁も黙って飲んであげればよかったじゃないか。



そんなことを考えたら



目頭が熱くなり、涙がこぼれおちそうになりました。



そして、あくる日のことでした。



なんと









$ウケる日記
霜田くんが普通に事務所に現れたのです。





第一声は






$ウケる日記
「お疲れ様っす」




でした。




「き、昨日の深夜電話したんだけど!?」と僕がたずねると、






$ウケる日記
「寝てました」





と答えました。






あの真夜中に聞いた鈴の音が一体何だったのか―――今だに謎のままです。






ただ、今日の霜田くんの鈴の音は



いつもより少し心地よく感じられたのでした。






















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新刊情報
2年半ぶりの新刊です。
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プロフィール

Author:mizunokeiya
はじめまして。
水野敬也です。
著作は「夢をかなえるゾウ」、「ウケる技術」、「雨の日も、晴れ男」、「『美女と野獣』の野獣になる方法」、「大金星」。DVD作品「温厚な上司の怒らせ方」の企画・脚本も担当しました。
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